絹の様な人たちがモノを作る時に、何を想い作っているのか。
直接お伺いし話を聞いてみたい。ということで今回お話しをお伺いしたのは
桐生に工房を構える「OLN」さん。
織物業を営む上で、直面する業界全体が抱えるさまざまな問題。
その問題を背負うのではなく、どう省くか。
従来の業界が決めた道をなぞる成功から外れ、自分たちの幸せをしっかりと見つめ直す。
そのことを「きれいごと」と表現した上で、成立させるために何を考えているか。
オリジナリティの作り方のヒントが今回見えた気がします。
「OLN」さんのプロフィール
OLN(オルン)は2014年、群馬県桐生市にある井清織物で
和装の帯を織る夫婦、井上義浩さん、忍さんの二人ではじめた活動名だそうです。
「織物で日々の暮らしを彩る」ための
生活雑貨やストール、そして帯のブランド名であり、
これからの織物業の在り方を自由かつ誠実に考え
実践するためのその全てを含めて「OLN」としています。
OLNは桐生の方言「織るん?」から来ています。
私たちは日々生まれる織物のアイデアを形にしています。
(前回の記事はこちら)
一番じゃなくても「続くやり方」を考えた方が良い。
井上義浩さん(以下:よしさん)
ぼくは仕事中に「そのやり方で、この仕事が続くかな?」
っていうことをよく言ったり、考えたりするんですよね。
実際に今の繊維業界って、力が弱いところに「シワ寄せ」が行きやすい形になっているんですよ。
弱いところとはつまり「立場的に文句の言えない人たち」って感じなんですが。
── 業界の中でも大手に比べて、弱い立場にいる人たちのことですね。
よしさん 僕の場合、たまたま、そう言う人たちから話を伺う機会が何度かあって。
自分から話を伺う...というよりは、耳に入ってくる。と言う方が良いのかもしれません。
で、最終的にその人達の「シワ寄せ」の話は同じ業界の僕たちにとっても他人事じゃないわけですよ。
途中工程を任せていた職人さんがこれ以上頑張れない。と言って辞めてしまったり、
後継者が育たない業界存続の問題だったり。
その状況があった上で、僕らの今の仕事をなるべく長く続けるためにはどうすれば良いか。
今、自分たちが言ったような業界の負担を背負い込みすぎないように、
さらに「業界で一番強い会社」みたいにならなくても成立するようなルールを模索中ですね。
人の描いたゴールと、自分たちの求めるゴールは決して同じではない。
よしさん そういう「一番じゃなくても成立する仕事」を考えるときに必要なのが、
一人でいる時間だと僕は思っているんですよ。
多分、都会のように、毎日人と接触していると自分独自の考えが揺らぐ...というか。
一般的にいう「きれいごと」だと思うんですよ。僕らがやろうとしていることって。
ただ、それがちゃんと成立するってことを僕は証明したいんですよね。本当に。
僕はそういうアイデアを練るために、
あえて、籠ることだったりとか、人と会うことを少なくする時間を作ったりしてますね。
むしろ、家族と一緒にいる時間を大事にすることで、
ちょっとずつ今の仕事が成立する方法が見えてきている...
...妄想かもしれませんがね苦笑
── ちょっとずつ前に進むって、色々と試してみるって中から生まれますもんね。
日々考え抜いたからこそ、今までにないもの。オリジナルが生まれるような気がします。
よしさん それでいうと、僕らは王道のやり方に弾かれた側の人間なんです。
父親や周りがやっている従来のやり方が僕らには合わなかったし、
たとえ、従来のやり方でうまくいったとしても、
行き着く結果が自分たちのゴールイメージとは重ならなかったんですよね。
従来のものでも、残していきたいと心から思えるものは残す。
井上忍さん(以下:しのさん) ただ、従来のものでもやっぱり残したいと思えるものがあったんですよ。
例えばその一つが「工場」。
私が最初にこちらに来た時は、工場の中が雑然としていたんですよ。
ホコリがすごいし、制作に必要ないものが多くて。
ただ、工場そのものの「佇まい」はかっこいい!!って純粋に思えたんですよ。
これは残したい。残せたらいいな!と心から思えました。
この工場で、ものづくりがしたいと思えたんですよね。
(つづきます。)