絹の様な人たちがモノを作る時に、何を想い作っているのか。
直接お伺いし、お話を聞いてみたい。
ということで今回お話しをお伺いしたのは、
「桐生整染商事株式会社」の川上さん。
シルク製品に特化したライフスタイルブランド「SILKKI」を立ち上げた方です。
アパレルと環境問題について、学生の頃からずっと考え続けている川上さんがたどり着いたのが、
「土に還る素材で服を作り続ける」ということ。
実は昔の人ができていた事を、取り戻したい。リバイバルという考え方。
シルクが持っている強さと優しさをしっかりと受け止めさせていただきました。
「SILKKI」川上由綺さんのプロフィール
川上さんは1992年生まれ。神奈川県出身。
日本とフィンランドでテキスタイルデザインを学び、2015年に桐生整染商事(株)に勤めるため桐生に移住。
社内ではドビー織機を使ってものづくりをしたり、織物の企画のお仕事をしながら、
「環境問題」や「サステナブル」ということをファッションで解決するにはどうすれば良いかを考え
2020年にシルクに特化したライフスタイルブランド「SILKKI」を立ち上げる。
シルクをもっとカジュアルに。
The goodness of silk to you.
をブランドテーマにし、
土に還る素材でものづくりを行うことを日々実験中。
「木島さん」のプロフィール
Silky Peopleの発起人であり、ブランドマネージャー。
アパレル担当で、実はこの記事の写真も主に木島さんが撮影されています。
群馬県桐生市出身JYUNYA WATANABEチーフパタンナーに就任後、
イオントップバリュ㈱で衣料商品企画開発部のチーフクリエイティブデザイナーに就任。
2011年に個人事業主として起業。2014年、株式会社Huggyhuggy(ハギーハギー)設立。
2015年、株式会社フクルを設立。
(前回の記事はこちら⇩)
デジタル疲れしている人に、もっとシンプルに生きて良いんだよ。と伝えたい。
編集・酒井(以下 酒井):
川上さんにお話を聞いていてもそう感じたんですが、
桐生でモノづくりをしている方って「穏やか」な雰囲気の人が多いですね。
SILKKI川上さん(以下 川上):
あぁ、穏やかというか、、、
確かに桐生にいる人達って、独自の世界観を持っている人が多いですね。
自我がはっきりしている分、独立心も強い。
他の人とも比べる気持ちもないというか。
酒井:
みんな違くてみんな良いみたいな感じですね。
フクル木島さん(以下 木島):
これは桐生だけでなくて、最近の若い方々は、
穏やか、、?
というか、大きな声を出さなくなっているイメージかも...?
川上:
それについては、私も最近感じている部分があったんです。
最近の若い方って思ったことを、思いっきり表面に出して発散しないというか。
それこそちょっと昔の若者は、
嫌なことがあったらヤンキーになって、大きな声を出して、それを大人が諌める。
まぁ、金八先生の世界観ですよね。
そうやって双方が大声を出すことによって
フィジカル的に「発散」できていたのかな。とも思うんです。
ただ、最近の若い方って
その発散の仕方が段々と陰湿になってきている気もするんです。
特にデジタルネイティブな世代。
スマホを使うのが当たり前の世代って
ネットを使ったいじめが横行しているじゃないですか。
そういうのは嫌だなぁ。と思いますよね。
実は、桐生の人はアナログな人が多いんですよ。
お互いに直接言葉を交わすのはもちろんですが、
使っている機械。特に織機なんかも変えなくても良いものは変えずに使っている。
アナログで成り立っているこの事実がすごい私にとって救いになっていますね。
酒井:
織機ってそんなに長持ちするんですね。
川上:
実は昔ながらの織機って部品を交換しやすくできているんですよ。
今の電気基盤制御ではなく歯車で調整しているので、ずっとメンテナンスしやすい。
というよりも、長く使うことを前提に作られているんです。
酒井:
織機そのものも、まさしく持続可能な。。。サステナブルなんですねぇ。
川上:
桐生にいると、人間って発展し過ぎている。ってことを常に感じるんですよ。
ある程度までいったら止まらないと行き過ぎちゃう恐れがあると思うんです。
正直、それに対応できる人もいるとは思うんです。
ただ、ほとんどの人はそうじゃない人だと思うんですよ。
さっき出したような、ネットいじめのような陰湿なものだったりとか、
問題が肉体的でなく「精神的」なものになっているじゃないですか。
そういう人たちにもっとシンプルに生きて良いんだよ。
って言いたいですよね。
全員がデジタルを使いこなさなくても、
私みたいにひたすら田舎でアナログに仕事を続けて生きてくこともできる。
自分にとって必要なものを取捨選択することで楽になることもあるんだよ。
って伝えたいです。
これからのメーカーは「作る意味」をしっかり打ち出さないと生きていけない。
酒井:
これからのファッション業界ってどうなると思いますか。
川上:
トップダウンという考え方が通用しなくなる。
と思いますね。
いわゆるハイブランドが打ち出したトレンドを、その他のブランドが追いかける。
というような形ですかね。
今までは、日本のどんな小さい会社でも影響を受けざるをえなかったんです。
それこそ日本に「洋服」というものが出てきた時からと言っても良いかもしれません。
ただ、ここ数年の「ファストファッション」の影響でそれがだいぶ変わりましたよね。
速乾吸湿みたいなハイテク素材で、
さらにデザイナーもしっかりしている人を入れている。
人々が本当に欲しいものを安く出してきているから、それは売れて当然だと思います。
酒井:
確かにファストファッションがでる前と後でアパレルの考え方って大きく変わりましたよね。
川上:
実は弊社もハイブランドのトップダウンで恩恵を受けていた部分もあったので、
少なからず影響はありました。
ただ、そうなってくれたおかげで、
自分たち独自でなにができるかを考えるきっかけにもなったというか。
オリジナルブランドである「SILKKI」の立ち上げも現実的に行うようになったとも言えますね。
あとは、やはりファストファッションが出てくることによって、
よりモノが本当に溢れている世の中になったと思うんです。
むしろ、その他のメーカーは「作る意味」をしっかりと打ち出していかなければ
生きていけないと思うんですね。
そこに関しては「SILKKI」も、今日伝えたような、
アナログで生きていくことの素晴らしさや、気持ちよさ。
作り続けることで救いがあるということを伝えていきたいと思っています。
酒井:
SILKKIさんが伝える、もっとアナログになって良いんだよっていうのは、
まさしくものづくりの「姿勢」として出ていますもんね。
川上:
はい。
本当に、もっとアナログな人間が増えて欲しいんですよ。
もっとみんなに楽になって欲しいって真剣に思ってますね。
酒井:
今日はありがとうございました。
本質的な働き方って何かということを考えるきっかけになった気がします。
川上:
いや〜。私自身が全部、桐生で体験したことを話しただけなんですよね。
実は私、出身は神奈川なんですよ。
学校は東京の方に通っていましたし、
東京で過ごしている時間の方がこれまでの人生では長いんです。
ただ、一回フィンランドに留学してから考えがガラッとかわって。
東京って必要以上にセカセカしすぎていると感じたんですよ。
海外に行ったことで客観的に今までの人生を見る視点ができたんですよね。
酒井:
はぁー!そうなんですね。
川上:
日本に帰国してから、実はものづくりしている地域って
たくさんあることに気がついたんですよね。
それで、知り合いづてにいろんな産地を巡りました。
京都から始まって、岐阜、愛知、桐生とどんどん見ていくうちに、
意外と大きな会社に入らなくても生計って立てられるんだ。って気付けたんですよ。
収入の高ではなく、健康的に過ごしている人の方が良さそうだな。と思ったんです。
すごい励まされたんですよね。
酒井:
どんどんと自分の生き方の選択肢が増えていったんですね。
川上:
基本的に自分って自由じゃないとダメなんだな。って感じました。
で、その自由なやり方で、弊社の売上や地域貢献ができれば良いなって思ってます。
みんなが納得してものづくりできることを続けられるようにしていきたいんですよね。
(終わります。)