「伝道師」という言葉を聞いて、どのような人を思い浮かべますか?
宗教的な教義を広める人?
それとも、良いものを広めるインフルエンサー?
桐生にある「絹遊塾 工房風花」のオーナー「絹の伝道師」板野ちえさんは、
まさしく桐生の絹で物作りするための道先案内人のような存在。
絹のことに関わらず、桐生で何か困ったことがあったら、
とにかく板野さんに一度聞いてみるといいかも...。
桐生の糸屋の家に生まれ、幼い頃からものづくりに親しんできた娘は、
自分で手を動かし、職人さんの文化に揉まれ、そして最後はものの作り方を伝える側になっていきました。
良い仕事を突き詰め、地元をよく知る。
ずっと桐生を、そして絹を見つめてきた板野さんから、ものづくりのコツを教わってきました。
「絹遊塾 工房風花」板野ちえさんのプロフィール
桐生市にある絹遊塾 工房風花のオーナー。
工房では主に手織り体験教室を開講されており、1日で経糸を張るところからストールを織るところまでを体験できます。
また、工房には絹製品、服作りに関係する方々が出入りし、板野さんになにやら相談している様子も。
講師としても、職人のアドバイザーとしても、まさに桐生の「絹の伝道師」としてご活躍されています。
「フクル木島さん」のプロフィール
Silky Peopleの発起人であり、ブランドマネージャー。
アパレル担当で、実はこの記事の写真も主に木島さんが撮影されています。
桐生の機屋生まれ。桐生在住。
群馬県桐生市出身JYUNYA WATANABEチーフパタンナーに就任後、
イオントップバリュ㈱で衣料商品企画開発部のチーフクリエイティブデザイナーに就任。
2011年に個人事業主として起業。2014年、株式会社Huggyhuggy(ハギーハギー)設立。
2015年、株式会社フクルを設立。
(前回の記事はこちら⇩)
■仕事の内容が解っていた上で、熱意があることが重要。
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お客様からの要望にギリギリまで応えようというモチベーションは
どこから来るんでしょうか?
板野さん:
私の場合は「依頼者が仕事が解っていて、熱意を持っているか。」ですね。
ものづくりに対して熱意を感じた場合はやっぱりやりたくなりますよね。
いい仕事している人に協力したくなる。
フクル木島さん:
しっかりと気持ちを動かしてくれる人柄ってやはり大切ですよね。
板野さん:
そう。
例えば、仕事が全然解っていない人って言うのはやっぱり難しいと思うんですよ。
そこが仕事が解っている人だと、こちらに無理を言ってくるのでも、厳しいと解っていて無理を言ってくるわけです。
そういうキチンとした人が困っているなら、受けないわけにはいかないんだろうな。と思っちゃいますよね。
ただ、私も最初から自分が手を動かそうと思ってないんです。
やはり小規模な工房ですからで自分で全部できないことはよく解ってます。
どちらかと言うと、桐生の職人さんを「紹介」することの方が多いかな。
依頼者さんと職人さんを繋ぐことをしていますね。
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板野さんは絹のワークショップの先生としてだけでなく、
桐生の作り手を把握している「桐生の案内人」のような方なんでしょうね。
板野さん:
あ、それはよく言われます。
長く桐生にいると、大体、誰が何をやっているか理解してますからね。
その部分については、布作り全体を取り仕切っていた「糸屋の娘」だったことが大きいですし、
自分自身が現場に入っていた経験があるからでしょうね。
職人の文化を目の当たりにしてきたんですよね。
フクル木島さん:
それですね。技術がない人の言うことは職人さんは言うこと聞いてくれませんから。
逆に、ちゃんと技術を理解している人の言うことは職人さんはよく聞いてくれますよね。
板野さん:
そうそう。
ちゃんと良い職人さんに頼もうとおもったら、頼み方があるんですよね。
「じゃ、ちょっとやってみるわ」と言わせるには流れと姿勢があるんですよ。
良い職人を動かすには札束でほっぺたを殴るようなことをしては絶対にいけない。
良いものを作ろう!っていう気持ちの方がよっぽど大事なんです。
私のことじゃないですけど、
良いデザイナーさんって大体、職人さんの現場見に来てますよね。
そういうのを知って初めて信頼関係ができて、依頼することができるっていうか。
そう言うのは私、色々と勉強済みですから笑
フクル木島さん:
板野さんって、自分自身でものを作るだけではなくて、
きちんと職人と交渉するまでが、ものを作ることって捉え方をされていますよね。
板野さん:
やはり職人さんも一人一人持っているスキルが違いますからね。
誰に何を頼めばいいかを知らないと、
結局、ものは出来上がらないですから。
■絹を扱ってさまざまな人に「道」を作りたい。
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今後、やりたいことなどありますか?
板野さん:
今は行政と障害者施設の方と一緒に、体の不自由な子でも使えるフラミンゴ織機を使って、絹の仕事を生み出したいと思っています。
現在、三ヶ所の施設で養蚕をやっています。
そこで、できた繭で出荷されなかった、要するに弾かれたものを使って糸にして、
その糸を使って、ネックウォーマーを作ることをしていきたいと思っています。
あの子たちは自分達で繭を作っていても、その絹を身につけたことはないんですよ。
だから、自分達の手で自分達のものを作るところから、まずは始めてもらおうと思っています。
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とても良い取り組みですね!
板野さん:
ただね、コロナの影響で進みがとても遅くなっちゃったり、
織り方を教えた施設の指導員が変わっちゃったりしてね。
なかなか進みが遅いんですが、ちょっとずつ進めている感じですね。
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そのような仕事をやりたいと思ったきっかけってなんだったんですか?
板野さん:
フラミンゴ織機を作ったメーカーからの提案でしたね。
せっかく作ったので、障害のある人達に使ってもらいたい。
今では八ヶ所の施設でフラミンゴ織機を使ってもらっています。
今では、私を通さずに施設と織機メーカーさんが直で繋がってもらって、
運用されていますね。
それぞれの施設で作ったものは、私を通さず直に販売店とつながってもらっています。
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なるほど、障害者施設と販売店をつなぐ。
そこでも「伝道師」としての役目を果たしているんですね。
板野さん:
おかげさまで方々の施設に織り方を教えに飛んでいってますね。
忙しく日々を過ごさせてもらってます。
(終わります。)