絹の様な人たちがモノを作る時に、何を想い作っているのか。
直接お伺いし話を聞いてみたい。ということで今回お話しをお伺いしたのは
桐生に工房を構える「OLN」さん。
話を聞いて感じるのは井上夫妻の「信頼関係」の強さ。
家族という枠をこえて、「人」として信頼できるということを強く感じました。
良い物ができる環境とは、やはり1+1=2ではなく、
1+1=100にも1000にもなる。
そういう相性の良い相手を見つけること。
そして、どうやって信頼関係をさらに大きくしていくのかという心構え。
これは、今回のインタビューをしていて深く学ばせていただきました。
第2回目からは、井上忍さん(しのさん)も同席いただき、
「信頼できる人間との制作風景の作り方」についてフォーカスできればと思います。
「OLN」さんのプロフィール
OLN(オルン)は2014年、群馬県桐生市にある井清織物で
和装の帯を織る夫婦、井上義浩さん、忍さんの二人ではじめた活動名だそうです。
「織物で日々の暮らしを彩る」ための
生活雑貨やストール、そして帯のブランド名であり、
これからの織物業の在り方を自由かつ誠実に考え
実践するためのその全てを含めて「OLN」としています。
OLNは桐生の方言「織るん?」から来ています。
私たちは日々生まれる織物のアイデアを形にしています。
(前回記事はこちら)
相手の呼び方を変えると、伝わり方も自分も代わる。
── 井上さんは奥さんのことを「しのさん」とお呼びになるんですね。
井上義浩さん(以下:よしさん) もともと、昔はずっと「しの」って呼んでいたんですよ。
しのさんの周りもそう呼んでましたし。
── なにか呼び方を変えるきっかけがあったってことですか?
よしさん 仕事でお客さんが来ている時に大声で
「しの!」って呼んだ時があったんですよ。
井上忍さん(以下:しのさん) なんか...そう大声で「しの!」って呼ばれるのが、
仕事関係なく...普段でも実は嫌だったんですよ。
呼んでいる本人は普通なんでしょうけど、周りからみたら
「なんかすごい怒鳴ってるよ...」みたいに思われてそうで。
── 大声で人の名前を呼ぶのって確かに側から見たら「上からっぽい」印象はうけるかもしれませんね。
しのさん 人前で、自分が呼び捨てにされている感じを受けちゃって。
自分はちょっと苦手だったのかもしれません。
よしさん そう、そういう話を聞いて、「しの」って呼び方を変えようと思いました。
仕事でも違和感がない呼び方ってなると、さすがに「しのちゃん」はないかな。
とおもっていたので、「しのさん」って呼ぼうってことになったんですよね。
それからは「しのさん」って呼ぶ練習を繰り返して。
そうすると段々と「しのさん」って自分が口にするたびに、
僕自身の気持ちを仕事モードに入れていくこともできる様になったんですよ。
10年はお気に入りとして身近に置いてもらえる商品を。
── 私たちSilky Peopleとも、商品コラボをしていただけるということですが、
商品開発って普段どの様に進める感じでしょうか?
よしさん 商品を使った時の感覚なんかは「しのさん」が考えていますね。
しのさんがいつもMD(マーチャンダイザー)として商品構成を見ていますね。
逆に、僕がアイデアを持っていくと結構却下されますね苦笑
しのさん よしさんはアイデアが唐突なんですよ笑
商品構成としては、メインは「帯」ですね。
着物を着る人は減少してはいますが、こちらの気持ちとしては帯をメインでやりたい。
むしろ、その帯を使った着物に合う様な小物を作りたいと思っています。
その小物を作る材料も、帯を作る時に織り傷がついてしまって卸せないものを
バッグとして仕立ててみたり。という感じですかね。
あとは、最初から商品としてつくるものとしては、着物が売れなくなる時期が多いです。
着物を着る機会が減る、夏の暑い時期などに使ってもらえる
ストールなどはその時作りますね。
── なるほど。使ってもらう方に伝えたい価値とかってありますか?
よしさん そのことについて、実は大事なことは自然とお客様に伝わると思っていて。
そもそも作っている僕らが本当に欲しいか。その値段で買うか。
そこはかなり意識して作っています。
たとえば「肌触り」。
僕、アトピーだから肌弱いんですよ。
できた商品を首にまいて「ちくちくテスト」っていってるんですけど笑
── 自らがまず使ってみて自信を持って送り出すってことですね。
肌触りもそうですが、この工房に置いてある商品って目に優しい色が多いですね。
よしさん 色は全部、しのさんが担当しているんですよ。
しのさん そうですね。私の中でもすぐ飽きて使い捨てるとか、
今だけでも良いから買う。みたいな商品は作りたいと思っていなくて。
できれば、10年くらいは自分のお気に入りとして、身近に置いておきたい。
置いてもらいたい。と思って色を選んでいます。
よしさん トレンドに振り回されない、普遍性のあるものを作りたいと僕も思っていて、
僕が今言った「普遍性」みたいなムズカしい理屈を、
しのさんは「ファッション」というジャンルに落とし込んでくれるんですよ。
僕の考えを心躍るものにしてくれるというか。
── お二人の共通する部分として、普遍なもの。
ずっと使えるもの。みたいなところはありそうですね。
よしさん そこはずっと二人とも共通してあったと思います。
自分たちの生活で使ったとしても、しっくりくる様な。
今の自分たちの普段の生活になじむ商品が多いと思います。
(つづきます。)